ウサギとカメ
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ウサギとカメ
野原でいちばん足の速いウサギと、池のほとりの年老いたカメが、丘のてっぺんの旗をめぐって勝負する。勝って当然の競走で、ウサギはなぜ負けたのか?
物語を読み、名前に触れて、この世界を形づくる設定に出会ってください。
本を開く第1話01
ケヤキの下の昼寝
野原の真ん中、クローバーがいちばん短く刈られた場所に、動物たちがぐるりと輪になって立っていた。その真ん中で、が後ろ足で地面をとんとんと蹴っていた。
「やい、のろま。本気で勝負する気?」
は耳をぴんと立てて笑った。向かいのはゆっくりと首を伸ばし、一度うなずいた。
「行ってみれば、わかるさ」
輪になった動物たちがくすくす笑った。審判役のが、しっぽで地面を二度たたいて静かにさせた。
「ルールはひとつだ。あの丘のてっぺんに、赤い旗を立てておいた。見えるだろう? 先に旗を抜いたほうの勝ちだ」
が前足を上げて下ろすと、競走が始まった。は風のように飛び出した。タンポポの綿毛がいっせいに舞い上がり、あっという間に、ウサギの白いしっぽは野原の向こうへ小さくなっていった。
は一歩踏み出し、ひとつ息をして、また一歩踏み出した。
ほどなく、は丘の中腹にあるケヤキの木の下に着いた。振り返ると、野原にはの影すら見えない。太陽は頭の上からじりじりと照りつけ、ケヤキの木陰はひんやりとして、ふかふかに見えた。
この場面の設定
読み進めると、この舞台で場面が展開します。本文に名前が初めて出ると、その人物が舞台に登場します。
フラップを開く前に
カメの姿も見えない丘の中腹。ウサギはどうする?
第1話02
ケヤキの下の昼寝
「あののろまがここまで来るころには、日が暮れちゃうな」
はあくびをしながら、ケヤキの木陰にごろんと寝転んだ。ひと眠りしてから走っても十分間に合う、と思ったのだ。葉のあいだを風がそよそよと吹き抜け、ウサギの長い耳がゆっくりと垂れていった。
そのあいだ、は野原を渡っていた。露をつけた草の葉のあいだを抜け、小川の飛び石をひとつずつ渡った。カエルに「もう負けてるのに、なんで行くの?」と聞かれても、カメは答えるかわりに、もう一歩踏み出した。
日が傾くころ、は丘の中腹にたどり着いた。ケヤキの木の下で、がいびきをかいて眠っている。白いしっぽが、息をするたびに上下していた。
は足を止め、眠っているを長いあいだ見下ろしていた。
この場面の設定
読み進めると、この舞台で場面が展開します。本文に名前が初めて出ると、その人物が舞台に登場します。
フラップを開く前に
眠っているウサギのそばを通りかかったカメはどうする?
第1話03
ケヤキの下の昼寝
はを起こさなかった。かわりに足音をしのばせ、さっきとまったく同じ歩みで、ケヤキのそばを通り過ぎた。一歩、ひと息、また一歩。
丘は険しかった。甲羅は重く、首はこわばった。それでもは止まらなかった。風が強くなってきたところをみると、丘のてっぺんは近い。
そのとき、ケヤキの木の下で、がぱちっと目を開けた。木陰は長く伸び、空は赤く染まっていた。
「もう夕方だって?」
は顔を上げて丘のてっぺんを見た。赤い旗のすぐ横に、苔むした丸い甲羅が見えた。ウサギは力いっぱい駆け出した。風よりも速かった。けれど今度は、遅すぎた。
この場面の設定
読み進めると、この舞台で場面が展開します。本文に名前が初めて出ると、その人物が舞台に登場します。
第1話04
ケヤキの下の昼寝
はしわだらけの首を長く伸ばし、赤い旗を口にくわえて引き抜いた。見守っていた動物たちが、わっと声を上げた。がしっぽを高く掲げた。
「の勝ちだ」
息を切らして駆けつけたは、何も言えなかった。は旗を置いて、ゆっくりと言った。
「わたしはね、止まらなかった、それだけだよ」
ゆっくりでも、たゆまず進む者が、最後には競走に勝つ。その日から、野原の動物たちは「のろい」という言葉を、からかいに使わなくなった。
この場面の設定
読み進めると、この舞台で場面が展開します。本文に名前が初めて出ると、その人物が舞台に登場します。
見える本 · この世界の設定はどこから来たのか
出典ノート
それぞれの設定が、公開された物語のどの文から生まれたのかを原文とともに集めました。
公開済み1話の設定3件。
設定チェックの記録
- チェックした話
- 0
- 発見
- 記録なし
- 修正
- 記録なし
- 未解決
- 0
発見・修正の件数は、この機能の追加後に行ったチェックから記録されます。